Reiko Imanishi
「セドナは人類共通の宝 深い魂に触れる場所」
2010.12.24update|インタビュー
「セドナ 聖なる大地」の著者である今西礼子さん。実に138点というセドナの写真、そしてセドナでの体験がつづられた一冊です。単なるセドナのガイドではなく、この場所の歴史やセドナの環境問題にも触れ、人類の共通の家である地球を守り、そして、その家族としてひとつになることが綴られています。パワースポットとして興味を集めるセドナですが、なぜ、セドナがパワースポットであり続けるのか、その答えも見えてくるような一冊です。その今西さんに、写真のこと、セドナのことなどを伺ってみました。
インタビュア:旭享子 撮影: マヤカ
1. 輝いているものの瞬間をとどめておきたくて
━━━今西さんは、どんな経緯で写真を撮られるようになったのですか?
- 日本ではツインピークスのTVシリーズで知られているデビット・リンチさんという好きな映画監督がいるのですが、彼は写真も撮るし、絵も描くんです、15年ほど前に、彼の展覧会を京都の清水寺に観にいって、彼が心の琴線に触れた瞬間を絵にしたり、写真にしたりしているのをみて、わたしもこの瞬間に輝いているものを留めておきたいんだということがよくわかったんです。求めていたことはこれだったんだという、インスピレーションを得ました。そして、その年のクリスマスの時期にニューヨークに行ったことで、実際に一眼レフカメラを手にするようになって、先生について本格的に写真を学び始めたのです。いつもは殺伐と気を張っているような雰囲気のあるニューヨークでも、クリスマスの時期にはそのバイブレーションが、まさにクリスマスの愛や喜びに溢れたものに変化しているのを肌で感じて、その雰囲気そのものも、フィルムに収めることで凍らせられたらって。
- もちろん、最初は趣味でした。イタリアなんかにもよく撮影に行っていたのですが、その写真がたまたまCDのジャケットに使われて。それをきっかけに、プロの道に入って行ったんです。
━━━ジャケットに使われたのは、何か写真をコンクールに出したりして?
- 友人があるレコード会社のデザイン部に勤めていて、私の写真を彼女の同僚がすごく気に入ってくださったんです。それで、作品をクラシック音楽のシリーズで使ってくださいました。暫くはイタリアの現代と太古の昔が時空を越えて同時に存在しているような面白さに惹かれて通っていましたが、アメリカのヨセミテに行ったことで、日本の自然とは違うダイナミックで広大な自然に感動したんです。イタリアのような街から、手つかずの大自然へと趣味が移行して、しばらくはヨセミテにも通ったりしていました。
2.セドナとの出会い
- セドナに出かけたのは、ある夢がきっかけでした。あるとき、ネイティブアメリカンの少し年配の女性、メディスンウーマンのような方が笑って、わたしを待っている夢をみたんです。そして、起きた途端に「サンタフェに行かなければ」と思ったんです。それはわたしの何か忘れていた重要なミッションを思い出させるような夢でした。その後、ネイティブアメリカンの本を読み漁って、それから実際にサンタフェに行きました。そして、現地で手に入れた本の情報からセドナという場所を知ったんです。そこがとてもマジカルな場所であると紹介されていて、それで無性に行きたくなってしまった。当時は、今のように日本では有名な場所ではないですし、インターネットも普及していなかったので行き方もよくわからない。でも、何とかなるだろうという感じで、なんとかホテルを探し出して、予約して出かけたんです。
- セドナに初めて到着したのは夜だったんですが、着いた瞬間、車から下りて足を踏み降ろしたその瞬間に、今まで感じたことのない優しいエネルギーに包まれたように感じたんですね。朝起きてもうびっくりしました。岩の赤さとか大きさとか、今まで人生で目にしたことのない風景が目の前に広がっていたんです。
- そして、セドナの四大ヴォルテックスのひとつであるカセドラル・ロックに出かけて行き、そこで、初めて自然を見て涙しました。地球がマザーアースといわれているゆえんを理屈じゃなく、体感したんです。その瞬間、もう涙が止まらなくなりました。私は、それまでは登山やトレッキングをするようなタイプではなかったんですが、とにかくセドナでは無性に岩に触れたくなって、まるでロック・クライマーのように岩場を登ったり、セドナの自然の中をとにかく歩き回ったりして、早朝、太陽の昇る前から、多くの時間を自然の中で過ごしました。
- そういった経験をしたので、それからはセドナに頻繁に通うようになりました。そして、会社も退職したので、長期に滞在して写真を撮るようになったんです。それで、滞在している間に、フリーランスになったんですね。
写真:カセドラル・ロックの鞍部。4大ヴォルテックスのひとつのカセドラル・ロックは、女性性のエネルギーに溢れている。その慈愛に満ちたエネルギーは、まるで魂に直接触れるかのよう。(C)Reiko Imanishi
━━━セドナは、今西さんにはどんな場所でしたか?
- 私自身、日本の社会の中で知らず知らずの間に身につけたこうしなきゃいけないとか、こういう自分でなきゃいけないというような思い込みを持っていたと思うんですね。そういう概念が外れていって、ただ素の自分に戻ればいいと。そういうメッセージがセドナのヴォルテックスの中にいるときに、聞こえてきて、それがすっと腑に落ちたんです。それがきっかけで、写真だけでは伝えられないこととして、文章も書き出しました。
- その頃、セドナは土地の開発問題に直面していました、ネイティブアメリカンの聖地として、彼らが自然の中で礼拝して大切にしてきた土地が、ただ教会のような物理的な礼拝堂がないということから壊されていく。そういう実態を知って、何か自分でもできないだろうかと、セドナのことをいろいろな雑誌に書き始めたのがフォトジャーナリストとしての始まりだったのです。
- 私にとっては、この問題はとても大きくて、東京に戻った私は心配のあまり咳が止まらなくなってしまったんですね。その咳が原因不明で、レントゲン撮ってもわからない。薬も効かず、3ヶ月間、激しい咳が止まらないまま、夜も眠れなかったんです。
- そんなときに、インドからアンマ(インドの聖者。世界各国を訪れて、一人ひとり慈愛をもって抱きしめて祝福している。日本にも毎年来日している。)が来日するということを知って、アンマが誰かも知らないまま、一人で、当時の会場であったよみうりランドにでかけていったんです。そこで。私は、セドナで起こっていること、それを受け止めきれずにいる自分への答えを見つけるんですが・・・。その話はとても長くなるので、またの機会にお話します(笑)。
- とにかく、私はアンマと出会って、セドナも地球も大丈夫なんだという安心を得たんです。
- その頃、セドナだけじゃなく、地球に対しても地軸がずれているとか、いずれ地球は滅びるといった、地球が危険だというようなメッセージがいろいろと発せられて、それに対してもわたしは非常に懸念していたので、アンマから頂いたメッセージですっかり安心でき、そして、いろいろなシンクロも起こり、その数日後にはずっと悩まされていた咳も収まりました。
━━━環境問題とかエコ問題に関心がおありなんですよね。
- はい。ただ、エコもセドナの環境問題と同じなんですよ。地球に優しい石鹸や洗剤を使うだけじゃ充分ではなくて、私たちの感情とか想念が実は一番有害だということを、そして、愛を込めて行動することが本当の祈りであり、地球への癒しになるということを、セドナの大地でメッセージとして受け取っていたんですね。ネガティブな想念を持ったらいけないと思うのではなく、沸き起こってきた感情に蓋をするのでなく、その感情が沸き起こってきたことをちゃんと認めて、責任をもってその感情を流すようにしていくこと、また、ネガティブな感情を何と結びつけるか、それと自分が一体にならないことがとても大切だというころがわかってきたんです。
- わたしたち一人ひとりは地球の細胞です。ですから、わたしたち一人ひとりが心身ともに健康になって輝くと、地球全体の癒しにも影響を与えるんです。そういう意味で、エコにももちろん興味はあるんですが、スピリチュアルなレベルで環境問題に貢献したい、そういう思いをこの本(「セドナ 聖なる大地」)にも書かせていただきました。また、拙本に綴ったセドナの大地と一体になっていたときに受け取ったメッセージは、当時はその意味をどのように考えたらいいのかわからないものもあり、後にその真意を探っていくと、それが古代からの深い叡智だと判明したりしたものもあったので、このわたしのセドナでの体験は個人のレベルとして留めるものではなく、多くの方々と分かち合うべきだと覚悟を決めたのです。
3.セドナで受け取ること、手放すこと
━━━セドナは、今、スピリチュアルスポットとしてとても注目され、日本からも大勢の方が訪れる場所になっていると思うのですが、これから行こうと思ってる方々にアドバイスがあったら、お願いします。
- 聖地とか聖者の周りにいると、すごくエネルギーが強いので、いろいろなものを引き寄せて、なおかつ、私たちが抱えている問題を浮き彫りにすることがあるんですね。私たちが本当の自分、本来の自分に戻っていくためには、ワンネスとつながれる純粋意識に戻っていくためには、今まで身につけたものをどんどんとっていく。たまねぎの皮をむいて芯まで戻っていくプロセスが必要で、癒しはまさにそのプロセスそのものです。それは、決してつらい体験ではなく、本当は祝福として起こっているプロセスなんですね。それが、セドナのような聖地では起こりやすいんだと思います。
- 例えば、カルセドラル・ロックの奥なんかはそうなんだと思うのですが、慈愛にあふれたエネルギーに満ちているので、安心して今まで溜め込んでいた感情や背負ってきた重荷を下ろせるんですね。それをしても安心な場所だと思います。母の手の中では誰もが安心して、身に付けていた不必要な鎧も外せるような感覚というか、だから、メッセージを受け取ったり、ビジョンを見たり、あるいは、突然感情があふれたりするのではないでしょうか。
━━━では、そういうことが起きると期待していい?
- そこが問題なんですよね(笑)。期待してでかけて、自分の期待したものが得られないと怒りの感情が出てきますよね。だから、セドナでよくあるらしいんですけど、セドナに行ったら癒されると期待して、自分が期待したことが起こらないと、怒ってゴミを捨てて帰る人もあるらしいんです。でも、何かが起こるには自分が無にならないと、それは起こりません。コップが空にならないと、何も入ってこないのと同じです。自分の存在が実はちっぽけだと理解して、謙虚になったときに、実は本当の自分とは、ちっぽけな存在ではなくて、宇宙の全体の重要な一部であることを理解できて、その全体のエネルギーや叡智が、その一部である自分に流れてくるような感じです。わたしがセドナの大地からメッセージを受け取ったときは、このような瞬間でした。言葉ではなかなか上手くお伝えすることが難しいのですが、とにかく、謙虚に自分が空になったときに、何かが起こるんです。しかし、そういった期待を過剰にもたずに、セドナの自然に触れてほしいですね。あの素晴らしい自然に触れると、本当にびっくりして言葉を失っちゃうと思うんです。思考が止まってしまうんですよ。その思考が止まった瞬間に癒しは起こると思うんですね。期待とか、判断とか、そういうものは利己性が生み出しているものなので、それを超えた体験をしたとき、本当の癒しがやってくるんだと思います。ぜひ、実際に味わってほしいと思います。
━━━特に、素晴らしいおすすめスポットはありますか。
難しいですね。言葉で説明しきれない場所もたくさんあります。セドナで四大ヴォルテックスといわれているところは、やはりおすすめです。それ以外でも、ベルロックの隣にあるコートハウス・ビュートですとか、ボイントン・キャニオンの近くのフェイ・キャニオンだとか、いろいろあります。滞在日数が短いと、なかなか他を回ることは難しいでしょうけど、余裕があったらお気に入りの場所を探すくらいの気持ちで行ってほしいです。セドナには本当に素晴らしい場所がたくさんあります。
写真:ボイントン・キャニオン。4大ヴォルテックスのひとつで、男性性と女性性のエネルギーがバランスよく合わさっている。人類の共通の家に戻ったような、ほっとする懐かしさを感じさせる場所。(C)Reiko Imanishi
━━━セドナに行くのに注意しておくことはありますか?
- セドナってみなさんが思ってる以上に、本格的な登山道具が必要な場所なんです。懐中電灯の用意やすべらない靴を履くということは、当たり前に準備してほしいと思います。街灯がないところですから、暗くなって何も見えなくなって遭難してしまったり、滑って怪我をしてレスキューが必要になったりすることがあるんです。それは、宇宙が、セドナが守ってくれるというお任せでなく、ちゃんと自己責任で注意していただきたいんです。とにかく無理はしないこと。日本人は真面目ですから、「頂上まで行かないと」という使命感のようなもので、ついつい無理をしがちです。でも、自分にとっての頂上でいいと思うんです。セドナに行ったら、自分に優しくしていいと思います。ただ、やはりエネルギーの高いところですので、無理でなく、自然にエネルギーに押されて、普段では考えられないような体力も出てきて、高いところまで登れてしまうということもあるんですね。だから、一つ一つ自分のからだの声を聞いて、確かめながら行動されるといいと思います。ある意味、とても直観力の試される場所でもあります。
- セドナという土地は、その土地そのものが昔からの聖地で、人類共通の宝だと思うんです。よくインタビューで「次のパワースポットはどこですか?」とか聞かれたりするんですが、流行ではないんですね。もっと深い、魂の触れる場所です。ですから、セドナに代わる場所はないというか。本当の自分との出会うきっかけになる場所だと思うのです。
- セドナがここまでパワースポットとして話題になったのは、実際にエネルギーが強いからです。セドナには単体のヴォルテックスが狭い地域に集結していて、それがセドナの大地全体に広がっています。ですから、他の場所よりも、ここまで注目されたのだと思います。実際にセドナで瞑想するのと、他の場所で瞑想するのとでは、その深さが明らかに違うのがお分かりになると思います。一度、瞑想の深い状態を体験すると、瞑想することがどのような意味があるのかも経験から理解できます。また、わたしはセドナでワンネスを体験して、経験からワンネスを知ることができました。そういう意味でも、セドナは人類の宝だと思うんです。
━━━最後に、今後の夢を聞かせてください。
- 夢というと、やはり世界平和です。母なる地球の健康が完全に回復して、自然も人々も、何も心配することなく、皆、生き生きと輝いて生きることができる世界が実現となればと願っています。そして、そのためにはまず、一人ひとりの内側の世界が平和にならないとそれは実現できないことだとセドナで気づかされました。これもセドナの大地から受け取ったメッセージのひとつです。先ほどの地球が癒されて健康になることとつながるのですが、意識が目覚めた人が増えれば、それが世界全体の平和に影響を及ぼすのです。具体的には、どういうことかというと、私も含めて、私たちは自分の利己性、個人の世界で生きています。今、地球には人口が60億人だとして、60億個分の小さな世界がある状態です。世界が平和になるためには、その60億の小さな世界が平和になって、そして、それがひとつの世界となって、本当に地球規模で家族になるということです。そのためには、まず、一人ひとりが自分の中の利己性に気づいて、その各々の内側の世界の紛争が完全に終結して、心の平安を得ることが大切なのです。その一人ひとりの内なる世界の平和を実現している数が増えると、それが波及して全体に影響を与えるので、世界平和への一番の近道になるのです。また、最近はセドナツアーを通して、現地で実際にセドナをご案内するようにもなりました。大地が癒してくれることを体感すると、自然と地球とのつながりを回復して、利己性を超えて、素の自分に戻るプロセスの大きなサポートになります。そのお手伝いを、実際に現地でさせていただいています。本当の自分と出会うには、素の自分に戻るだけでいいんですよ。本当の自分とのつながりの回復も、様々なレベルで、セドナの大地がサポートしてくれるんです。自然が実際に生命を持っていて、慈愛をもってわたしたちを精神的にも支えてくれているということが、セドナではよくお分かりになると思います。
- セドナとの出会い、アンマとの出会い、そして、これから出版される翻訳した本との出会い。それによって、自分自身がよりクリアになってきたので、写真だけじゃなく、文章だけじゃなく、スライド・トークショーなど声を通しても、セドナの大地から受け取ったメッセージを多くの方々と分かち合っていきたいですね。ミュージシャンの方とのコラボも考えています。
- 多くの方々のスピリチュアルな目覚めのために、わたし自身が大いなる存在の透明なパイプのような役割を果たすことができればということがわたしの願いです。そのためには、まず、自分自身の内なる紛争を終結させて、スピリチュアルに目覚めることも目指しています。
写真:エアポート・メサ。4大ヴォルテックスのひとつで男性性のエネルギーが強いと言われているエアポート・メサからの夕日と月の出。天と地が溶け合う、境界線にたたずんでいるような感覚になる。(C)Reiko Imanishi
インタビュー後の感想:
この原稿を書いているとき、ハワイ島やロスのリトリートの誘いがありました。でも、やはり、私はセドナの赤土が見たい。次に旅するのはセドナだということがはっきりと確信できました。それは、今西さんの情熱にインスパイアされたものか、それとも自分の中に眠っていた記憶なのかわかりませんが、「セドナ 聖なる大地」の写真、一枚一枚が私の何かをかきたてるのです。自分の行きたいという強い思いが確認できてとても爽快でした。これもまた、セドナの、本当の自分と出会う力なのかも知れません。(た)
今西礼子 Reiko Imanishi
フォトグラファー、エッセイスト、ライター、フォトジャーナリスト。 エコ、ロハス、スピリチュアルをテーマにアメリカ、インド、ヨーロッパなどで取材を続けている。また、ヒーリングのプラクティショナーでもある。 2008年は、NGOジョイセフのアフリカ、ザンビアのスタディーツアーに参加し、現地の状況を撮影する。著書は『セドナ 聖なる大地』(ナチュラルスピリット)、『世界のパワースポット』(ヴォイス)アメリカ編撮影、執筆。
今西礼子さんの翻訳本『Journey Into Now「今この瞬間」への旅』(レナード・ジェイコブソン著)
2010年12月25日発売。
●セドナツアーに関する詳しいお問い合わせ
メール
http://www.reikoimanishi.com/